今日が最終日だった「トルバドール第7回プロデュース公演『天国より高いとこ
いこうよ』」を見てきました。場所は東京芸術劇場小ホール2(池袋)です。
H列13ということで、ほとんどセンターの位置でした。客数は100弱位だったと
思います。
第1幕 『人の話をきけ!』 作:小田景子 演出:西原信行
出演
女1:小田景子
男1:江口信
占い師:和智碧
女2:梶原まり子
女3:奥田なほ
男2:西原信行
舞台は夜の公園。真ん中にアンティークな街灯がある。右手には木のベンチ。左
手には占い師が暇そうに座っている。
男が慌てて走り込んでくる。少し遅刻した彼は、今日のデートで彼女にプロポー
ズするつもりだ。しかしなかなか彼女が来ない。占い師がめざとく声をかけるが、
男はそれどころではない。
そこに現れた女性。少し地味で思い詰めた表情の彼女が占い師の元へ進む。自分
の運命の人について尋ねる彼女。占い師の前には大きな蛙の置物。インチキ臭い占
いで、デートの待ち合わせをしている男を見ながら、さも占ったように告げる。
男が忘れ物に気付いて去った後、純真な彼女はそれを信じて元気に去っていく。
女が遅れた事を謝りながら登場するが、既に男はいない。占い師に尋ねるが、知
らないと言われる。占い師の言葉にのせられてつい占ってもらう。占い師は、彼女
の相手がプロポーズする事を知っているので、「今日は人生の転機になる」と告げ
る。すると彼女は最近連絡の無い彼が「きっと別れるつもり」と勘違いする。彼女
は先日お見合いしたという。「変化に身をゆだねろ」という占い師の言葉を「見合
いした相手に決めるべきだ」と思ってしまう。
少しずつ「ずれ」が生じ始める二人。
プロポーズのタイミングを見計らう男と、お見合いした事を告げられずにいる女。
互いに話がうわの空になっている。しかし恋人同志、次第にいつものように仲の良
い二人になりつつあった。
そこに男の会社の女子社員登場。その女子社員は男がプロポーズする事を知って
いる。恥ずかしさから、男はあわてた態度で彼女の事を隠そうとする。そのことか
ら再び彼に対する不信感をつのらせる彼女。険悪なムードが漂う。ふざけてごまか
そうとする彼に「人の話を聞きなさいよ!」と怒鳴る彼女、ついお見合いをしたと
いう事が口走ってしまう。さらに険悪なムード。二人は別々の方向へと去る。
全てを見ていた占い師が、彼女に向かって見合い相手と結婚する事を勧める。
そこにピンクのスーツにバナナを持った女が登場。先ほどの地味な女だった。占
い師の言葉を信じて、ピンクのスーツにバナナという出で立ちになったのだった。
再び男が登場し占い師に占ってもらう。占い師が彼女の事をさんざんけなすと
「それは違う」と強く否定する。彼女への想いを占い師に打ち明けている様子を、
影で見ていた彼女。
「あなたと私だったら天国よりずーっと高い場所作れるよね…」
「俺が持っていると無くしちゃうから」と、指輪を彼女の指にはめる。
仲直りをした二人は食事に出かける。
「食って食って太ったら、もう指輪、外れなくなるもんね」
Metal Trapのお芝居で以前も出てきた、羊のぬいぐるみを着たメンバーが次の舞
台を作る。
第2幕 『NOW UNTIL FOREVER』 作:TARAKO 演出:西原信行
出演
キャンディ:TARAKO
ひでと:堀広道
ゆきこ:渡辺菜生子
ぼてにゃん:西原信行
声の出演
男:菊池正美
おじさん:巻島直樹
女:乃梨子
舞台は中古の人形を扱うお店。真夜中。中央のベンチにフランス人形のキャンディ、
左手には日本人形のゆきこ、右手に男の人形のひでとがいる。人形も死ぬのだ、と
いう話をしている。
キャンディとゆきこは古くからの仲良しで、ひでとは最近この店にやってきた。
ひでとの口調は女言葉である。前のご主人様は男だったというのだが…。男の恋人
(男)が嫉妬して、ひでとを捨てるように言ったが、男は捨てるに捨てられず、こ
の店にひでとを売ったのだった。
ゆきこが以前にいたところでは、ガラスケースに入れられていたので、夜になっ
ても身動きがとれなかった。縁起が悪いと思われ、この店に売られてきたという。
キャンディは前のご主人の事について語りたがらない。
そこへ羊のぬいぐるみ、ぼてにゃん登場。週に1度のジェスチャーゲームが始ま
る。ひでとは、あいさつをしても返してくれなかったぼてにゃんが嫌いだという。
実はぼてにゃんは喋れないのだった。最初のご主人が喋れない人だったのだ。それ
を知ったひでとは、ぼてにゃんに対してすまないと思う。そうしてひでとは次第に
皆に打ち解けていく。
人形は、人間に触られた日の夜は動けない。また、人形が自分の意志で人形に触
れたら魂がなくなってしまう。
ぼてにゃんはキャンディが好き、キャンディはひでとが好き、ひでとはゆきこが
好き、ゆきこは人間が好き、という関係だった。
ゆきこがもうすぐ売られる事になった。それぞれ皆、複雑な想いである。
キャンディがひでとに過去を話し始めた。この店の店主が娘へプレゼントしたの
だったのだが、娘に好かれなかったため、初めから店にいたのだという。明るい性
格のキャンディが好きだというゆきこには、まだその事を告げていない。ゆきこは
キャンディの前のご主人様が明るい人だったに違いないと信じているからだ。
キャンディがお客さんに触られた日(その晩、キャンディは動けない)、ゆきこ
が過去を話し始めた。前のご主人様の夫が駆け落ちしてご主人様を捨てたという。
次第にご主人様へ情が移って、駆け落ちした夫を憎むようになったためか、不吉な
雰囲気になり売られたという。
もうすぐ売られるゆきこは、皆と別れる淋しさを隠しきれない。
いよいよ明日ゆきこが売られる、という日が来た。お客さんはガラスケースも望
んでいる。再びゆきこはガラスケースに閉じ込められるらしい。
ゆきこは落ち込んでいる。キャンディとひでとは一生懸命慰めようとする。ゆき
こは温もりを求めていたのだ。ご主人様に名前を付けてもらって、抱きしめてもらっ
て、頭を撫でてもらう事が夢だったのだ。しかし今度のご主人はそういった事をし
てくれそうがない。
ゆきこはキャンディに、ご主人様に抱きしめてもらった時の事を聞こうとする。
しかし、そういう事がなかったキャンディは困り果てる。その瞬間、ひでとがゆき
こを抱きしめる。
「何故?」
人形が自分の意志で他の人形に振れると魂がなくなってしまう。それを知ってい
て、ひでとはゆきこを抱きしめたのだ。
次の日、ゆきこは売られていき、何故かひでともいなくなっていた。
キャンディはゆきことひでとを羨ましく思っていた。思い出す度に、いなくなっ
た二人を淋しくも思っていた。ぼてにゃんはキャンディを慰める。
明るい性格のキャンディが淋しさにくれている。
そんなある日、ぼてにゃんもまた売られていく…。
第3幕 『約束』 作:早見淳平 演出:長沼仁
出演
中園浩二:早見淳平
沢村俊夫:長沼仁
川嶋真由美:若林育美
兼田憲子:鷹部奈津子
大学の卒業式。真由美と憲子が喧嘩をしている。小学校からの親友だった二人が
同じ男を好きになったのだ。卒業式の当日、二人ともその彼にふられてしまったの
だ。
子どもの頃からの積もり積もった思い出でお互いにけなし合う。
絶交寸前までいったときに二人が「約束」を思い出した。
卒業してから5年で、どちらが良い男と結婚しているか、を競い合う戦いを約束
していたのだった。一年に一度、暑中見舞いで近況を報告するだけの戦いだった。
何故暑中見舞いかというと、「見舞い」の方が相手の優位にたてるからだ。
卒業し真由美は出版社に勤め、憲子は幼稚園の保母となった。
3年目の夏に真由美から自身に満ちた暑中見舞いが憲子の元へ届いた。真由美は
素晴らしい彼、俊夫を見つけたのだ。しかし憲子には全く彼を作ることが出来ずに
いた。
ところが、真由美の彼は会社を辞め、2年後のハワイでのトライアスロンに出場
するという。それまで待っていてくれと言われた真由美は、それでも幸せを確信し
ていた。
憲子にもチャンスが巡ってきた。一人淋しく飲んでいたときに、声をかけてきた
男がいたのだ。それはかつての有名スター、浩二だった。しかしそれはお金を貸し
て欲しかっただけだったのだ。憲子はパートナーとしてふさわしいと感じ、しかも
ずっと昔に浩二が憲子の家の近所に住んでいたということも知り、熱をあげ始めた
ところだった。
浩二は自分の夢に向かって役者になり、一時は有名にもなったのだが、使い捨て
の社会に嫌気を感じ、夢への情熱も薄れ、すさんだ生活をおくっていたのだった。
そして浩二はその2週間後に覚醒剤の使用で逮捕されてしまう。その記事をスクー
プしたのは真由美のいる出版社だった。
こうして憲子は全く出逢いの無いまま、約束の5年目を迎えようとしていた。
もうすぐ約束の日という時に、真由美から憲子への“掟破りの”手紙が届いた。
大きな仕事を任せられて忙しく、約束の日を1ヶ月遅らせて欲しいという内容だっ
た。仕事内容は世界各地で連続して起こっている飛行機事故で、その全てが乗客乗
員全員死亡、そして、事故の一つにハワイからの便も含まれていた。
5年目の約束の日、二人は再会した。憲子は負けを認めたが、真由美は引き分け
を告げた。そして幸せになる戦いを無期限にし、互いの幸せを見届ける事にした。
親友として…。
大まかなストーリーはこんな感じでした。いつものように、ギャグがちりばめら
れた中にホロっとさせるものがある舞台でした。
最後に全員が登場し挨拶をした後、「天国より高いとこいこうよ」が会場に流れ
て終了となりました。相変わらずmoonのコーラス部分に反応してしまう私でした。
今回は、役者さんのパワーというのは会場でないと味わえないものだ、と感じて
きました。なかなか芝居も捨てたもんじゃないな、という気持ちです。
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かみと,1994