独特な歌の世界を繰り広げる宇井かおりさんのコンサートに行ってきました。
関東も梅雨入りらしいということで、雨の降る原宿でした。
会場には24x11+16x3の席が用意されており、全て指定となっています。
とてもゆったりとした雰囲気で開演を待ちます。席はほぼ埋まっていた
ようです。
19時にアナウンスがあり、客席を照らすスポットライトが明るく(!)なり
ました。会場内には虫の音や鳥のさえずりのSEが流れ、5分ほどして宇井
さんの声によるコーラスが聴こえてきました。
1. ドラセナ〜真実の木〜
客席が暗くなり、いつのまにかステージに現れていた宇井さんにライトが
当たります。黒のタンクトップに黒のパンツ、黒いネックレス、腕にも
飾りを付けていました。宇井さんらしい地味なスタイルです。腕の細さが
目につきます。マイクスタンドに向かい、ほとんどの時間を目をつぶり、
何かを思い描いているかのように、カラオケに合わせて唄っていました。
そんな宇井さんはまるで、暗闇の森林から出てきた妖精のようでした。
今回のアルバム『Destino』の中でも、この曲だけ時間軸が違うと思って
いて、とても印象的な曲です。何年もの月日を数秒で過ごしてしまうかの
ような、視点が固定されたイメージを持っています。
2. 失恋記念日
ここでバックのメンバーが登場。ステージ向かって左からGt,Dr,Bs,Keyの
4人。最初はGtのみの演奏で、ボーカルが前面に押されていました。次に
Drが入りBsとKeyが入って、音の厚みが増してくるに従って、宇井さんの
声もより力強くなってきました。
MC 「こんばんは…こんばんは。よく会いに来てくれましたね」
「こうやって皆さんが集う場には、必ず雨が降るので心配していました。
“雨女”では物足りないため“嵐を呼ぶ女”と言われてしまいました。
今日はどこに出しても恥ずかしくないくらいの雨で…。今は止んでいる
らしくて、ちょっと“チェッ”と思ってしまいました。」
「金沢では ひょう が降っていて、しかも開場の時ものすごいひょうになっ
て、私が唄っているときは止んでいたのに、お客さんが帰る頃にまたひどく
なって…。」
「大阪のキャンペーンでは、大雨警報が出ていたんです。今日の帰りは何が
降るかわからないので、気をつけて帰って下さい(笑)。」
3. POWDER LOVE
イントロではちゃんと、CDにも入っている力の抜けた「はい〜」もありま
した。ステージ向かって左側に置いてあった椅子に座り唄っていました。
4. エンドマーク
ステージ右側のスペースに立ち、ささやくように唄っていました。
次のイントロが始まる前に、宇井さんの後ろから細いスポットライトが
宇井さんに当たり、詩の朗読がありました。
「さよならだけが人生ならば 遠く離れている人を 二度と会えないかも
しれないのに それなのにこんなにもしっかりと愛せてしまうのは 何故
でしょうか。」
5. Destino
再び細いスポットが後ろから宇井さんを照らします。ここでのお客さん
の拍手は無い方が良かったと思います。続けて詩の朗読。
「さよならだけが人生ならば 大切な大切なものだけは 人のとがめる
ようなそんな道を選んでも それでもこんなにも愛しい気持ちが 変わら
ないのは何故でしょうか。」
6. Door
Gtのみのバックでしっとりと唄っていました。所々声が裏がえったり
してベストな状態とは言えませんでした。
再び詩の朗読。
「さよならだけが人生ならば 大好きな空に上ったまま 二度と帰らない
あなたのことを思い出す度に 強く生きたいと 鋼のように強く強く
生きたいと思えるのは 何故でしょうか。」
7. Feather
Pfのみの伴奏で唄っていました。妹さんのことを思い出したのでしょう、
唄の後には涙を拭っていました。
8. 悲しみにまけないで
前の3曲とは違って、詩の朗読はありませんでした。Gtのみの伴奏で
始まり、2コーラス目から他のメンバーが加わりました。ファルセット
が美しく響きわたります。
MC 「いろいろなことがこの1年間あって、うまく表現するのに運命という
言葉があって、今の気持ちにピッタリ。」
本当の自分になるのは難しい。誰かのことを好きになると心の中が
その人のことでいっぱいになるように、自分のことでいっぱいになれば
すごく満ち足りた関係になれるのではないか。
「"Destino"はラテン語で"運命"。」
アルバムのジャケットは合成ではなく、本当に海に行ってきた。「よく
見ると顎のあたりに"サブイボ"が見えます。」
9. 木枯らしの便り
親元を離れ一人で暮らす人の心には、すっとしみ入るような曲。ファースト
アルバム『Just Sighs』の中でも特に気に入っています。
この曲を聴けて嬉しかったです。
10. ありがとうではじめよう
のびやかな唄い方をしていて、これまでの宇井さんのイメージとは少し
違い、底辺の広さを感じます。椅子に座って唄っていました。
11. 君が淋しいというのなら
バックの音がしっかりと宇井さんをもりたてています。
MC 「近くにいなくてもその人がいるだけで頑張れるということがあります。
近さというのは距離じゃないんですよね。」「皆さんそれぞれが運命の川を
泳いでいて、いままでどんな泳ぎ方をしてきたのか、『浮き輪使っちゃっ
たんだ、今までの人生』という人もいるかもしれません。下手でもいいから
自力で泳げるような自分の人生を生きたいですね。」「誰かにさよならと
言われても、自分にはさよならとは言えないですからね。」
12. しゃぼん玉
しゃぼん玉のように高く飛べる、と唄っていますが、風という運命に翻弄
されているようなイメージを持ちます。そしてすぐにでもはじけてしまい
そうなはかなさ。曲の力強さの裏側を感じてしまいます。
後奏の途中でゆっくりとお辞儀をしてステージのそでに消えます。バンドの
メンバーがステージを下りるところでアンコールの手拍子が起こりました。
MC 「ふふっ」と笑って「何でもないです、今の笑いは。」「出会えて良かっ
たです。こういう出会いがあるからやめられませんね。」
E1. 帰ろう
「私自身のテーマになっている曲」と紹介して唄いました。Pfのみのイン
トロで、アレンジが大幅に変わっているため、ちょっと違和感がありまし
た。
MC メンバー紹介(Gtふるかわまさよし、Drさとうまさはる、Bsひがわたつひこ、
Keyふじいりょう)。ここでバックのメンバーはステージを下ります。
E2. ふるさと
ア・カペラで唄います。会場が静まり返り、宇井さんの唄に集中している
ことがよくわかります。
きっちり1時間半のステージでした。アルバムは妹さんに捧げたものであり、
「空」とか「飛ぶ」といった言葉が多く出てくることから、視線が少しだけ
上に向いた内容になっていたと思います。ファーストアルバムが室内の歌だと
すれば、セカンドアルバムでその扉を開け(タイトルそのまま(^_^;))、
今回のステージで外に飛び出した、といったところでしょうか。そんなことを
感じさせるコンサートでした。
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かみと,1997