拝郷メイコさんのワンマンライブ“月とすっぴん”が表参道FABで行われました。
毎週のようにライブをしていたこともあって、まだまだ先だと思っていたのですが、
いざ当日が訪れると「どうなるのだろう」という興味が出てきます。今回のライブは
拝郷メイコさんが生まれてきてから生んできた曲ほぼ全てを唄う、とのことでした。
当初から3時間に渡るライブという話がありました。
会場には150弱の椅子が、左右はもちろん前後についてもかなりきっちり並べられて
いました。中央付近に通路があり、両側にはスペースが無い配置。お客さんは大抵
中央付近から座るので中央から席が埋まるけれども、両側の席へ行くには座っている
人のためにさらに狭くて通りにくい状態のため、席を確保するのにちょっと混乱。
一通り席を確保すると今度はドリンクカウンターが混乱。立ち見多数の盛況ぶり。
この日のライブは“月とすっぴん”というタイトルで、2部構成になっている
ことも以前から話がありました。
18:10頃第1部開演。ウサギの着ぐるみが登場。ステージ下手側に置いてあった
アナログレコードのプレーヤーの元へと向かいます。手には『ミチカケ』の
ジャケットのLP盤があり、それをプレーヤーにかけたところで拝郷メイコさんが
登場。
1. うさぎのダンス
月がきれいだからあなたとダンスしたい…という曲。軽めのギターで入って
後半はストロークになります。
2. 桜のころに
3. 木綿
なんとなくライブでは久しぶりに聴いた気がして、そういえばこんな曲もあった、
と思わされます。全体的に抑え気味で若干高音域の伸びがありませんでした。
4. やさしいちから
こちらも耳元でささやくような弱めのやわらかな唄い方。この辺り前半の曲は、
この後の長丁場に備えて飛ばし過ぎないようにという考えだったのだろうと
思います。
MC 「こんにちは拝郷メイコです。元気そうだね。敢えて(「元気ですか?」と)
訊きません。「調子はどうですか?」と訊かれますが、昨日今日は家でグダグダ
していたので大丈夫です。“生誕25周年記念 月とすっぴん”へようこそおいで
くださいました。恐くもあり楽しみでもあり…。今日リハーサルのときに、
すごい楽しみと思いました。(開演時にレコードを操作する演技をした)うさぎより
先に出ようかと思うくらい。あたためたい、揺さぶりたい、いてもたっても
いられなくしたい、そういうライブにしたいと思います。今回はA面B面という
2部構成です(開演時のうさぎの動きにはそういう意味があったのですね)。
この日しか飲めないスペシャルドリンクもあります。ゆったりと興奮しないで
見てください。思い思いに過ごしていただけたらと思います。」
5. 虫歯
この曲も久しぶりに聴いた気がします。
6. フラッシュバック
“夏の匂い”という単語が出てくるように、夏の太陽の鮮やかさを感じます。
7. よるのなか
8. あめふり
やや軽めのストローク。雨が屋根を叩くかのように、客席から自然に手拍子が
起こります。
MC ここまではずっとYAMAHAのギターで弾いていて、ここでGibsonが登場。先日の
川崎のイベントでGibsonの調子が悪かったので、もしかしてギター1本で通すの
だろうか、と心配していたのですが、大丈夫だったようです。
「いい手拍子だった。手拍子されるのは実は苦手なんですが、自然に手拍子を
してくれて、手拍子無しでは唄えない曲があります。」
「“月とすっぴん”で自分の曲をほぼ全部やると口が滑ってちょっと後悔した
のですが、昔の曲を掘り返して気付くことことがありました。自分の曲再発見、
自分再発見。季節で曲を分けていくことにしたら、作ったときは意識して
いなかったけれど必ずどこかに季節を入れていました。(四季のある国で育った)
日本人なのだと自覚しました。今の4曲は夏の歌でした。」確かに春、夏と
季節が移ってくるような選曲ですね。
「季節はガラッと変わって冬の曲です。」
9. 僕に降る雪
柔らかい唄いかた。雪が舞うかのようにミラーボールが回っています。
10. くちぶえ
この辺りからだんだん唄い方に力が入ってきました。
11. のら
やっとこの曲が聴けました。再三リクエストしつづけたこの曲。以前イベントで
(“月とすっぴん”では)メイコさんの曲をほぼ全曲唄うと聞いた直後に、
「「バイバイ」とか「私」とかは無理だと思うけど「のら」唄うよね。」と
圧力を加えていた曲(^_^;)。少なくともソロ名義になってからは一度も聴いた
ことがありません。当時のほかの曲は最近も唄っていますが、この曲だけは
唄ってくれませんでした(ちなみに「バイバイ」や「私」は作曲者がメイコさん
ではないし、雰囲気も今のメイコさんと全然違うので今回のライブでは唄わない
だろうと思っていました。「朗読ならできるけど」と言われていましたし)。
「のら」はバンドの頃の名曲の一つだと思っています。事情によりかわいがって
いた猫を手放さなければならない状況(端的に言えば捨て猫)の曲で、別れる
せつなさとか強く生きなければいけないという思いとか、自分が捨てられる
猫の立場で唄っているかのようなところもあり、時間とともに心が変わってしまう
かもしれない気持ちとか、ものすごく心の痛くなる曲です。
今回はもちろんバンドでの音ではなかったので、運命に押し流されるような
強い力は感じにくいところがあり、やはりバンドライブで唄って欲しい曲だと
再認識しました。
MC 「今は拝郷メイコと名乗っていますが、「のら」は「トマトスープ」よりも
ちょっと古い、かなり前の曲で、Mayとしてバンドで唄っていた頃の曲です。
(激しいストロークの)こんな曲、(拝郷メイコさんの曲の中では)あまり聴かない
よね。また聴きたいと思った人は言ってください。2年に1回くらいやるかも
しれません。」
「弾き語り独演会というつもりでしたが、ゲストをお呼びしています。」
サンフラワーズガーデンの本田有佳里さんが登場。有佳里さんが外が晴れて
いたことを話すと、メイコさんは「雨のつもりで「あめふり」唄ったのに」。
メイコさんは有佳里さんを「かわいいです。お世辞です。」と紹介したりして。
メイコさんの最近の(?)目標は友達を作ることとのこと。昔からの友達は
いるけれど、最近(特に業界内に?)友達ができない。有佳里さんからは
拝郷メイコさんの好きな山崎まさよしさんの待ち受け画面をもらったそうです。
メイコさんの夢の中に山崎まさよしさんが出てきて、「すっぴんっていいよね」
と言われて、このライブのことがかなり意識の中にあることを自覚させられた
とか。有佳里さんの趣味は盆栽、という話もありました。
12. いいこ
キーボードのみの伴奏。シンプルなアレンジで、心の奥底に流れる変わらない
思いを唄っているかのような普遍性を感じさせる唄い方でした。
MC どうやら当初はメイコさん自身でキーボード弾き語りをするつもりだったよう
ですが、演奏をお願いしたようです。有佳里さんは、この曲を初めて聴いたとき
「泣くのをこらえるのが大変で、いつ作った曲なのか気になった。」とのこと。
サンフラワーズガーデンとは「元気の出るイベント」を毎月最終日曜日に
渋谷Right-on前でやっていることも紹介。ちなみに翌日の29日は拝郷さんは
お休みとのこと。
有佳里さんによるメイコさんのエピソード紹介。「初めて会った時と話すように
なってからの印象が違う。お饅頭を6個も8個も食べる人。」と言っていました。
メイコさんは普段自分のことを「あたし」と言うけれど、スタッフの前では
「メイちゃん」と言っていることも、自分で暴露して恥かしがっていました。
13. サーカス
有佳里さんがアコーディオンを用意している段階で「サーカス」と予想が
つきます。若干控えめなアコーディオン演奏で、この曲の雰囲気を考えると
もっと音が前面にでてきても良さそう。
有佳里さんの出演はここまで。
14. せかい
高音がきれいに伸びています。
MC 「そろそろ休憩の時間です。(休憩では)一度自分を見つめなおしてください。」
「変わってしまうもの、変わらないものを表現してきた気がします。」
15. チャイム
多少、絞るような唄い方をしていました。
16. ゆうぐれ
これまで聴いていた「ゆうぐれ」よりも広さや遠さを感じました。
ここで休憩になります。19:50頃でした。前半だけで1時間40分、一般的なワンマン
ライブだとこれで終了、というのが一般的な時間帯になるかと思います。後半も
同じ位の曲数を唄うことが想像できるので、ワンマンライブを2本見るかのような
ボリュームということになりますね。
2部は20:15頃から。再びうさぎが登場し、レコードを裏面に変えます。会場には
宇宙のようなイメージのスペース系の音が流れていました。
1. 月夜
前半が四季だとすれば、後半は夜のイメージかと思います。力強い演奏で、
重みのある唄い方でした。
2. 赤い星
3. ブルー
MC 「休憩はいかがお過ごしでしたか?休憩の間に衣装を変えました。無口でした。
オーラとも殺気ともつかないもので心配されていました。」
スペシャルカクテルは夜空に浮かぶ月のイメージだそうです。
4. 一輪
ストローク系の曲。初めはビブラフォンでゆっくりしたアレンジにすると
いいかなと思ったのですが、聴いているうちにもっと早いストロークで
ロック色を出した方が良さそうな印象でした。
5. かけら
アルペジオで始まる曲。
6. 七色
「HOME」や「あめふり」の系統の曲。サビではパッと広がりを感じます。
MC 「「一輪」は最近作った曲。「かけら」は曲を書き始めてすぐの頃の曲。
「七色」は聴いたことがあるかもしれないけれど…水野真紀さんが出ていた
ユニマットのCMで流れていた曲。」「七色」については誰も聴いたことが
無かった様子。
CMつながりでゲスト。Pitch talks(ユニットとしては活動停止しているんですね)の
いいのまさしさん。5年くらい前に知り合って、拝郷メイコさんが唄っていた
全国牛乳普及協会のCMソングはPitch talksの相方(仁科亜弓さん)が作ったもの。
今回いいのさんが1曲に膨らませた。この曲がCDになって9/24に発売される予定
だそうです。
7. もしも私がお母さんになったら
メイコさんは唄と鉄琴とカズー。いいのさんはギター。童謡のような雰囲気の
まま唄います。拝郷メイコさんの名義で発売されるようですが、タイアップが
つかないとCDリリースは大変なのだろうとか、これまでの曲と雰囲気が違うけど
とか、いろいろ思いながら聴いていました。
MC いいのさんはここまで。いいのさんについて「人見知りだけどいいやつ」と
言っていました。
続いてのゲストは…前回のワンマンライブ同様、一部のお客さんの椅子の下に
タンバリンや鈴などがありました。一人“当たり”の人はシンバル。
8. HOME
和やかな雰囲気で唄います。
9. ななしのおさる
こちらも楽しい雰囲気。曲の後半ではお客さんに唄わせますが、ステージから
下りてきて、お客さんにマイクを向けていました。ステージに階段があったので
きっとそんなことになるだろうとは思っていましたが…。
10. セロファン
ゆっくりとしたアルペジオ系の曲。6thの音が印象的で、ボーカルはロングトーン
を多用しています。「ソイトゲヨウ」の世界に近い曲ですね。
MC 「こんな曲(一緒に唄う曲)がもっと欲しいと思っています。前半は恋の歌を
たくさん唄いました。究極の恋の曲を。皆さんが良い恋をしてくれますように。」
11. ソイトゲヨウ
優しさあふれる唄い方。
12. 空と海
後半になるにつれてジワジワと盛り上ります。
13. トマトスープ
MC 「立ち見も出てしまったくらい、いっぱい来てくれて嬉しかったです。出会った
きっかけは10000人のメロディという人も多いかと思います。8805人になりました。
リハーサルのときにこの情景が浮かびました。二度と3時間は唄わないと思うので
こんな私を焼き付けて行ってください。」
「死ぬ時に口ずさむのではないかと思う曲を。」
14. 手紙
15. メロディ
一部マイクを通さずに唄っていました。
MC 「3時間、長い間聴いてくれてありがとうございます。私にはあっという間でした。
25になって、これからもいろいろなことを聴いて感じて唄っていきたいと思って
います。」
16. 家路
ここで終了。ちょうど22時頃。しばらくしてアンコールの手拍子が起こります。
ほぼ全曲唄うということもあった上に、既に3時間以上唄っているわけで、
アンコールは無理と思ったのですが…。
MC 「絶対にアンコールしないつもりだったのですが。」
E1. メロディ
いつものドリンク付きスタンドを持ちつつ(まるで病院で点滴している人が
歩いているかのように)客席に下りてきて、会場の真中付近で唄います。
入場時に狭いと思った通路で唄うことになり、一番近い人はギターが当たる
のではないかと思うくらいの近さ。マイク無しということもあり、水を打った
かのように静まり返った中で唄います。客席の中央にお客さんのエネルギーが
集中し、それを受けてメロディが振り撒かれるようなイメージでした。
それにしても長いライブでした。作った曲ほぼ全部といいながら、三十曲くらいと
思ったほど曲数が無いのは、MCが長いわけではなく1曲1曲が長いからなのですが。
別の観点から考えると、オリジナル曲として三十曲というのは少ない気がしますが、
楽曲のクオリティの高さを含めてのものなのでしょう。
前半は力をキープしている感じがありましたが、後半のことを考えると妥当な判断
かと思います。前半で良かったのは、唄のやわらかさを感じさせる「僕に降る雪」。
後半では「ソイトゲヨウ」「空と海」のあたりが印象的でした。
まるで波のように絶え間無く押し寄せる拝郷メイコさんのメッセージと、
マラソンを見ているかのような連続性、たった一人だけなのにスケールの大きさを
感じさせるライブでした。度々客席に下りてきて唄うことによって、お客さんとの
一体感を作りやすい状況を導き出したり、いろいろとさりげない工夫が織り込まれた
内容だったと思います。
SAIL Music Laboratoryへ戻る
かみと,2003